雨の闖入者 The Best BondS-2
玄関の方まで走りつくと、屋敷の前の鉄門がしっかりと閉じられていることに気付いた。
鉄の閂までかかっているとわかったのは、この屋敷に灯された明かりのお陰。
閂を開けて、門を引くが、元々自動の両開き門は片方だけではびくともしない。
喚きたい衝動に駆られたが、エナは門を蹴ることでその衝動を抑えた。
そこへ、ばしゃばしゃという足音が。
もちろん、その足音を掻き消すほどの地響きも聞こえてくる。
「二人同時に開けて!」
まだ姿見えぬ二人に声を投げる。
そして、身を翻し、エナは玄関の扉に手を掛けた。
がちゃ、と音をたてただけで、扉は開かない。
予想通り、鍵がかかっている。
「ご丁寧なコトねっ!」
扉を殴る音をぎぎぎ、という音が掻き消した。
振り返ると、二人が鉄門を押し、屋敷内に入ってくるところだった。
そのままこちらに走ってこようとするゼルに、エナは怒鳴った。
「閉めて!」
エナの合図に、はたと気付いたゼルは鉄門に戻った。
鉄の閂(カンヌキ)を掛ける。
「エナ、怪我してンぞ?!」
ゼルがエナの小さな傷を見咎めた。
「人のこと、言えないでしょ!」
「大丈夫! 傷物になってもジストさんがもらってあげるから!」
胸をどんと叩いて尊大に言うジストを睨みつける。
「こんくらいで傷モノになってたまるかっ! ってゆか玄関閉まってる。厨房から……」
と、その時。
がきん、と金属同士が触れ合うような音が響く。
振り返って、その音の正体を知る。
獣が門扉に突進する音。
「マジ何だよ! あの体!」
家の明かりで浮かび上がった獣の体。
それは先ほど森の中で想像した通りの獣の顔。
そして、さっきは窺い知ることが出来なかった毛の代わりになっていたのは、黒曜石のような尖った物体。
それが体のあちこちから無数に突き出てその身を護っていたのだ。
元の大きさはわからないが、金属のような音を鳴らす尖った塊を入れると、大の男三人分の幅くらいはあった。
障害物に阻まれて焦れる獣の唸り声が耳を刺激する。