雨の闖入者 The Best BondS-2
「だぁら何の話かって聞いてんだろーが! オレ一人のけ者にすんじゃねェよ!」


読めない話が繰り広げられていることに喚いたゼルに二人の視線が集まった。


「……」


エナは視線を外し肩を竦め、やれやれと首を横に振り、ジストは胸元のポケットから煙草を探り出し、使い込まれた革で巻かれたジッポライターで火を付けて一口吸い、大仰に煙を吐き出した。


「……な、なんだよ?」


妙な沈黙が産む居心地の悪さに耐え兼ねたゼルが呻いた。


「……だって……ねぇ? エナちゃん」

「そーねぇ……ホント脳みそ詰まってんのかなー…」

「うるせぇ放っとけ! っつーか、しみじみ言ってんじゃねェよ! おい! 白々しく溜め息つくなっ」


おそらくこのまま放置していたらゼルの声は更に大きくなっていくのだろう。

エナは仕方がない、と説明を試みた。


「……あのね、ゼル? ジストの情報屋以外の仕事は知ってるよね?」


ゼルは目をぐるりと回して過去から答えを引っ張りだす。

情報屋以外の仕事、つまりはジストの本業こそがエナとジストを引き合わせたようなものだ。


エナが依頼人なのだから。


そして、奇(ク)しくもゼルはその『仕事現場』に居合わせ、しかも後日、二人の出会いについてしっかりと説明を受けていたのだから知らないはずがない。


「L.Hっつって、護衛したりすんだろ?」


エナは再度溜め息をつく。

その通りだ。

その通りなのだが、余りに見識が軽いというか、薄いというか。

L.Hという名前がどれほどの力と権力を誇っているのかゼルは全くわかっていない。


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