雨の闖入者 The Best BondS-2
「その祈祷師に話が聞きたいんだけど……もう解雇したの?」


話を聞いてみるくらいの価値はあるかと提案したエナだが。


「……祈祷師は三日に渡る祈祷の末に寝込み、一週間前に、この屋敷で息を引き取りました」


三人は目を瞠った。

ラファエルも身に頭を埋めながら、耳だけがぴくぴくと動いている。


「このままでは……私もきっといずれ死んでしまう……。お願いだ、助けてください!!」


「助けるも何も……」


ジストが気だるげに煙草を灰皿に押し付けた。

エナがジストの発言を手で制し、イェンに言葉を投げる。


「ちょっと待って。どうして祈祷師が死んだからってあんたが死ぬことに繋がるのよ」


人はいずれ死ぬのだ。

そのタイミングなど様々で、祈祷師はもしかしたら何処か患っていたのかもしれないし、また別の要因があったのかもしれない。

幾らなんでも決め付けるには不確定要素が多すぎた。


「その祈祷師がですね……、死に際に言うんですよ、雨、雨に気をつけろ、とうわ言のように」


「雨に気をつけろ……ね」


エナは親指を口にもっていきかけて、ジストの視線に気付き手を引っ込めた。


「……例えば、その祈祷師の言うことに意味があるとしたら……あたしたちも、もう巻き込まれてるってことじゃない?」


エナはゼルに視線を送った。


「ってことは何だ?! オレらもこのままじゃ死んじまうってのかよ?!」


テーブルを拳の横で叩きつけると、食器が震え、かたかたと音を鳴らした。

無駄に大きなリアクションを五月蝿いと諫めようかと思ったエナだが、イェンがびくりと体を揺らしたのを見てその言葉を飲み込んだ。

依頼主のイェンを威嚇するにはゼルの大きな身振り手振りは効果的だった。

案の定、イェンは怯えた声を出す。


「その可能性は否めません。ただ、雨に直接長時間打たれなければもしかすると大丈夫なのかもしれません。しかし、悪夢は見るようになるかも……しれないです」


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