雨の闖入者 The Best BondS-2
異常気象という言葉の範疇を超えた雨に着目するのは当然だ。

それに、祈祷師は三日三晩、雨の中に居たのだというのだから。

だが、それを悪夢と連結して考えるのは如何なものか。


ゼルが自分専用のマイ箸を置いて天井を仰いだ。


「天気を変えろっつーことなんだろうがよ、そんなもん、人の手に負えるもんじゃねェだろ」


エナはテーブルに肘をついて、手で頬を支えた。


「馬っ鹿ねー。自然現象なワケないじゃん」


片時も雲が途切れず雨が降り続くことなど有り得ない。


「……何者かが、作為的に雨を降らせているのは確実なんだがな」


珍しく茶化していないジストの声にエナは顔を少しだけそちらに向けた。


「組織的な線は?」


視線を受けて、ジストは再び次の煙草を口に咥えて火をつけた。


「まあ、無くはないだろうな。……が、わざわざこんなシケた港町を標的にする理由があるか? 俺だったら御免だね」


標的とするなら、まだトルーアの方が理解出来る。

闇市を快く思わない者も多いし、トルーアに初代の闇屋が居るという噂は声高々に伝わっているからだ。

抹殺したい者はそれこそ星の数ほど居よう。


「……そうだよね。海の幸が狙いならともかく……新鮮な魚も食えない港町なんて糞喰らえよ」

「ああ、間違いなく問題はソコじゃねェな」

「何言ってんの。重要なコトよ」


この町の売りとも言える魚介類。

それをなくして、何処にこの町を破綻させるメリットがあるというのだろうか。

海の幸が取れなくなって喜ぶ連中が居るというのか。


それとも。




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