雨の闖入者 The Best BondS-2
わかりやすいジストの説明を受けてゼルは感心したように頷いた。


「へぇーなるほどなぁ。じゃあよ、その雲ってのはどうやって作るんだ?」


知識を取り入れる環境で育ってこなかったゼルには何から何まで興味深いものらしく、その目はきらきらと輝いている。


「雲は、その水蒸気が冷えて氷の粒になったものだ。空高く上がれば上がるほど気温は下がるからな。放っておいても雲は出来る」

「なるほどなぁ! ジスト、アンタって実は頭いいんだな!」


残念ながら真面目さとはほぼ無縁なジストを、ゼルは珍しく手放しで褒め称えた。

「でもジスト。そんな大掛かりな機械があればすぐにわかると思うんだけど」


天候を変えるというのは言わずもがな、大変なことだ。

ただ一度雨を降らせたり、逆に晴れにしたりすること自体はミサイルを使えば不可能なことではないことを知っているが、降らせ続けるとなると難しい。


となれば、ミサイルの線は限りなく薄い。

そんな予算を組めるのは大国くらいだし、それを為したところでメリットがあるとは思えない。

ということは、それ相応の機械なり何なりがあるはずだ。

そして、機械があるならば勿論それは大きなものの筈で、視覚か聴覚で存在が露呈する筈だ。


だが、イェンはそんなことは一言も口にしなかった。


「確かにね。けど、此処は港町だし? 近くに湖も多いし? 原料の水には困らないんだから、そう考えるのが打倒じゃない?」


いわゆる、消去法、というやつである。


「そうなのよね。とりあえず湖でも調べてみるかぁ」


その言葉を聞いて、今まで黙っていたイェンが弾けるような勢いで話に割り込んできた。


「それでは依頼を受けてくださるので?!」

「ま、ね。ただし、報酬はきっちり貰うわよ」


報酬、という単語を耳にしてイェンは不安そうな声になった。

ぼさぼさの眉毛も少し潜められている。


「それは、如何ほど……」


イェンの声とは裏腹にエナの声はきっぱりと強いものだった。

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