雨の闖入者 The Best BondS-2
「雨の原因、あるのは……湖なのかな。海、なのかな……?」
屋敷に帰ってきた三人はラフが待っていた宛がわれた部屋の一室で床に地図を広げていた。
本日調べた湖にバツ印を付け、明日の予定を立てるにあたって独り言のように呟いたエナにジストが地図から顔を上げる。
「あと、不気味な風ってのも気になるポイントだね。今までユーノでそんな話は聞いたことなかったしー?」
そういえばそんな話もあったなと思い出して頷いたエナの隣でゼルは地図の一点をじっと見詰めていた。
地図なんて見てもわからないくせに、と思いながらゼルを見遣ると、
ゼルが淡い灰色の瞳をエナに向けて、再度地図に視線を戻し、鈍く銀色に光る人差し指で地図の海面を指した。
「……なぁ、それってよ……確か海の方から吹いてくるっつってたよな……?」
探るような声音は、ゼルにしては珍しいものだった。
エナの目も自然とゼルの指を追う。
「ウン。でもそれがどうし………」
エナが言葉を区切り、ゼルの顔を凝視した。
「………そっか。」
呟くエナの瞳が強い光を宿す。
「その風の音。それが雨を作る何かが生み出す副産物……ってコトね……?」
確かめるようなエナの慎重な言葉にゼルも神妙に頷いた。
「たまにはゼルも役立つよーなこと言うんだなぁー。いやぁ感心感心!」
茶化すような言葉遣いで褒めたたえるジストにエナが諌めるようでいて真剣な視線を投げる。
その瞳の中には一刻も早く海を渡りたいという焦りが見え隠れしていた。