雨の闖入者 The Best BondS-2

「……ジストは、どう思う?」

「んー。可能性としては高いと思うよ? 火の無いところに煙は立たないって言うしね。些細な情報を取り敢えず繋げてみるのは鉄則。ゼル程度に指摘されちゃったのは癪だけどー」


「慢性的に見下しやがって……」


恨めしい視線などジストにとっては何処吹く風。

むしろ悪戯心に火を点けるきっかけにしかなりはしない。

うんうん、と声に出して頷いてにっこりと笑う様が見事に好青年を気取っているから性質が悪い。


「いや、だから褒めたじゃないかー。エラいな、よく気付いた」

「その物言いが見下してるっつーんだよ!」


すぐ脱線しようとする二人にエナは手を二度打ち鳴らした。


「はいはい! 二人共、静かに! 轡(クツワ)つけるよ?!」

「……一番見下してるのはてめェか。クソ女」


対するエナもゼルとの言葉遊びには慣れたもので、飄々と言い返す。


「せっかく上がった株、自分でおとしめるコトないでしょ。だから駄犬だって言われんのよ」

「言われてねェわボケ! 勝手に捏造すんじゃねェ!」


いちいち律儀に反応を返すから遊ばれるということに、いい加減気付いてもよさそうなのに、とエナは心中で笑う。


「ラフの爪の垢でも煎じて飲めば?」

「てめェが飲んどけ!」


名を呼ばれたことに反応して、暖炉の前で丸まっていたラファエルが閉じていた目を開けた。

白のふわふわとした毛が、今は炎の光を浴びて朱色に染まっている。

夏とはいえ、雨が降り続くこの町は肌寒い。

吹き付ける風が、この季節からは考えられぬほど冷たいからだ。





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