雨の闖入者 The Best BondS-2
「どうしてラフは良くてジストさんは駄目なの? エナちゃん冷たい」


拗ねた声音にエナは肩で息を吐いた。


「あんたは自分で洗えるでしょーが」


その言葉に何故か顔を輝かせたジストを見て、ゼルが親指でジストを指した。


「おいエナ。コイツ平然と腕の一本くらい折ってみせっから、そーゆー言い方はヤメとけ」


確かにこの男なら自分で腕をへし折り兼ねない。

そしてきっと清々しい程の笑顔で堂々と言うのだ。
一緒に風呂に入ろう、と。


余りに馬鹿馬鹿しい、けれど想像の範囲に収まりきらない余りにリアルなゼルの発言に、エナは口を引き攣らせ視線をを明後日の方に投げた。


「その時はゼル、あんた一緒に入ってやってね」


同時にジストとゼルが「げ」と声をあげた。


「……じゃあ、エナちゃんを護る為に片時も傍を離れないっていう口実なら?」


めげない男だ。

口実とはっきりと公言しているあたりが実にジストらしい。


「ご心配なく。風呂の時くらい、自分の身は自分で守りますから」


これ以上の会話は時間の無駄だと言い切り、エナは手早く着替えを用意し、部屋を出た。







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