雨の闖入者 The Best BondS-2
妙に勘が良い、とジストは思う。

知識が薄い故にゼルの思考はいつも短絡的だが、時に物事の真理を突く。

エナと似ているように思えるが、エナの場合は知識を持った上で必要なものだけを直感で拾い上げていくのだから実のところ全く違う性質だ。


ゼルは諦めたように息を吐いてジストへと視線を移動させた。


「それがわかりゃ苦労しねェよ」


戻る答えは当然といえば当然だ。

知識の無い者は想像を働かせると右に出るものはいないが、一つの答えに辿り着くには至難を極める。


「………そうだな」


立ち上がったジストにゼルが何処に行くのかと問いかける。


「野郎と居ても楽しくねえしな。覗きでも……」


至って真面目な表情で言ってのけた台詞にゼルは目を丸くして、そのあと溜め息を吐いた。


「ったく、懲りねェな、アンタも。殴られるくらいじゃ済まねェの知ってンだろーに」


呆れながらも止めないゼルにジストは笑顔を作り、人差し指を自らの唇にあてた。


「健全な青少年ですから」

「言ってろボケ」


眠るラファエルの後ろで抗議するように、暖炉の炎が小さく爆ぜた。



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