船々恋々

報告から戻った木之下さんは、周りの人に私の面倒を見てくれた事に感謝を述べ、丁寧なお辞儀。
私も会釈をした。

そして事務所に戻ると、心配そうに駆け寄ってくる所長。
「すまないね、今日、彼の姿を見た時に、三浦さんにも報告しておくべきだった。何か言われたかな?」
私は、食事会とSペイントの事務員と仲良くするように言われたことを伝えた。
その話に、所長と木之下さんは真剣な表情で。
「不味いね。何か、仕掛けてくるかもしれない。」
「そっすね。ホント、あのバガノ、ウザいっすわ。」
木之下さんの暴言に、所長は苦笑で否定もせず。

私は不安になる。
自分の会話も阻まれれば、強気で自分の意思を通すことも難しい。
まして逃げ道を見つけることも出来ないなら。
「Sペイントの事務員には、気をつけるっすよ。良い噂を聞かないっすからね。」

いつものような軽い感じの忠告だけど、気をつけていた。
出来るだけ係わらないように。

油断していた?
そうかもしれない。
彼女は私と仲良くなることではなく、この造船所から消そうとしていたなんて。
思いもしない。
そんなチャンスを待っていたなんて…………

そして私をドン底へと突き落すような画策は実行に移されていた。
所長も木之下さんも不在。
私は事務所内の掃除をしていた。
そこへ造船所のお偉い様が登場。

「お疲れ様です。」
「あぁ、少し飲み物を頂けるかな?」
なんだろうか、いつもと少し雰囲気が違うような。
気のせいかな?
「はい、良ければ座ってお待ちください。」
アイスコーヒーを入れて、お偉い様の前にコップを置いた。
「三浦さんだったかな、君は俺の事をタヌキと言ってるそうだね。」
へ?タヌキ?


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