船々恋々
所長さんは誰かに電話を始めながら「おう、また連絡くれ。」と。
仕事できる人って、違うなぁ。
「行くわよ、道中で話を聞くわ。」
深元さんの顔が輝いて見える。
まるで、状況を把握しているかのように。
「さ、どんな話をしたのか教えて。」
「はい。最初、森脇さんから『俺の事をタヌキと言っているのか』と訊かれまして。」
その一言で、深元さんは急に足を止めた。
「え?」
驚いた私も足を止める。
「そう訊かれて、何でこうなるの?」
何で、こうなるのか?
私は首を傾げる。
それが理解できないから困っているんだけど。
「ん~……私はキツネじゃないって話と関係があるのか尋ねたら、そうなりました?」
まずは、その言葉がきっかけだよね。
「ふっ。ふふふ…」
何故、森脇さんと同じ笑い方するのかな?
頭の良い人は、何考えてるのか良く分からない。
「流石、三浦っち!」
そして、澤田さんの事務所に到着。
ここも別のライバル会社で、協力会社。
「え、何、何で走って来たん?」
PC作業が丁度終わった澤田さんは目を上げて、前に立つ私たちに驚いていた。
「所長さんは?」
「所長は現場だけど、呼んだ方が良い?」
「行くのは、私の方の事務所。出来れば現場監督も一緒の方が良いわ。増員の話が出たから。」
「え、マジか。ちょっと待って、電話するわ。」
何だか本当に、大騒ぎだなぁ。
増員が大変なのは知ってるけど、何でこんな大げさな事になったのかな。
森脇さん、急用を思い出したって言ってたけど、忘れちゃだめだよ。
「何を言ってんの。」
「原因はあなたよ。」
私の話を終えた後、二人は冷めたような視線で答える。
え?私の所為?
「怖いわぁ~。騙したキツネを、無意識で殺すんだもの。」
「そうよねぇ。しかも最恐の方法で。」