吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)
♯13.二度目の話し合い。
リビングの高い天井を見上げていた。なぜこんなところで寝ているのだろう?
深緋はしきりに瞬きをし、上体を起こした。眉を八の字に寄せ、首を捻る。
部屋の雰囲気はいつもと変わらない。BGM代わりにしているテレビからの雑音も時計の秒針も。ローテーブルにはトマトジュースの入ったグラスと白い封筒が置いてある。
「え……」
不意に嫌な予感が脳裏を掠める。深緋は四つん這いでテーブルに近づき、手紙らしき封筒を掴んだ。
こんなところに、こんなものを置いた覚えがない。
宛名はこれまで通りのラベルシールで『朝比奈 深緋さま』と印刷されている。封が切られていないということは、三通目を意味する。
「織田が……この部屋に来たの?」
だとしたら、ここで寝ていた理由はひとつしかない。ドラキュラに吸血されたのだ。そして記憶が飛んだ。女吸血鬼の血を飲むことで受けるデメリットは説明したはずなのに、更にそれを摂り入れるなんて、一体なにを考えているのだろう?
再度ローテーブルに目を向ける。あるはずのものが無くなっていた。伝承を書いた絵本が。
封筒を手にしたまま慌てて立ち上がり、織田がまだ家にいないかどうかを念入りに調べた。二階の各部屋を周り、一階に降りて来て、トイレや浴室、祖母の部屋のクローゼットの中に至るまで、隅々と。大袈裟に息をついた。
良かった、帰ってる……。