吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)
 未だ状況を理解していない白翔に、「スグルくんが事故に遭って」と聞いたままを伝える。

 白翔の顔が強張った。今にも泣きそうな深緋を見て、「そんなに酷いの?」と問われた。

「一刻を争うって……リリーさんがっ」

 そう言ったとき、白翔がパッと手を挙げた。往来する車の群れの中から一台のタクシーが二人の手前で停まる。後部座席のドアが開き、白翔と並んで乗車した。運転手に目的地を伝え、出来るだけ急いで欲しいとお願いをした。

 病院に着いてから受付に向かい、事故に遭って運び込まれたスグルくんのことを尋ねた。てっきり手術室に案内されると思いきや、地下にある一室だと教えられる。そのことで容体がどうなったのかを察してしまった。

 職員に案内された霊安室で、深緋は力なく膝を落とした。リノリウムの床に付いた膝から寒さが這い上がり、背中から順に冷えていく。

 彼への喪失感は、彼女へ結びつく。スグルくんは文字通り、祖母の命綱だった。

 祖母は暗い目をしながらも、微笑んでいた。スグルくんの顔に掛かっていたであろう、白い布を手に掴み、彼の頬を撫でている。優しい表情をしていた。

 それまでクリアだった視界が、ゆらゆらと蜃気楼のように揺れている。瞳いっぱいに溜まった涙がツツ、と頬を伝い顎から零れ落ちた。

「スグルが死んだよ」

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