吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)
 英のいる所へいくのに、あと何日掛かるかは分からないけど、あたしは一人で旅立つよ。

 これ以上、深緋やハクトに迷惑をかけたくないし、だいいち猫だって死場所を見られないように家族から離れるものだろう? そういう事だって思っておくれ。

 深緋には話した事なかったけどね。あたしも昔、猫を拾った事があるんだよ。

 あいにく飼い猫だったから、無事に飼い主の元へと返したけどね。その猫がリリーって名前だったんだ。

 まだあんたが幼い頃、あたしの事を「ママ、ママ」って呼ぶもんだから実は相当困ってね。家の中でならまだしも、幼稚園のお迎えの時にもそう呼ぶもんだから、あたしは閃いたんだ。「ママじゃないよ、リリーさんだよ」って。

 あんたは素直だから、それがママに代わる呼び名だと思ったんだね。それからあたしはずっと「リリーさん」なんだよ。

 あの猫との出会いは、美郷から深緋を託される前だから、もう半世紀以上も昔の話になるけどね。リリーが白くてとても綺麗だったから名前を貰ったんだよ。馬鹿げてるって笑うかい?

 ああ、もうそろそろ老いる時間だよ。
 タラタラしてないでさっさと手紙を書いて出ておけば良かったよ。まぁあたしは老いても美人に違いないけどね、やっぱり歳をとるのは嫌だね。

 あたしが居なくなったからって、いつまでもメソメソ泣くんじゃないよ?
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