吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)
 あんたはハクトの為に、ちゃんと人間にならなきゃいけないんだからね。

 あんたがこの先苦労しないだけの貯金は何十年もかけて貯めてあるから、大学へも行けるし、マンションだって買えるよ。堅実なおばあちゃんに感謝するんだよ?

 じゃあね、ハクトによろしくね。


 朝比奈 すずゑ(リリーさん)より、愛を込めて 】


「………うそ」

 呟きと共に、顎から水滴が落ちた。

 びっしりと文字が並んだ便箋に、丸い染みが幾つかできて、ところどころが滲んでいる。

 文章に目を通しながら深緋は既に泣き顔だった。祖母の遺書とも取れる手紙を茫然と見つめ、唇が震えた。深緋の隣りに座る白翔も言葉をなくし、固まっている。

「っこんなの、嘘だ」

 瞳いっぱいに広がる涙の膜が、視界をゆらゆらと歪めている。

「なんでっ、リリーさん……っなんで!?」

 そこに書かれた現実を受け止めたくなくて、何度もなぜを繰り返した。

「……なんで、」

 声が掠れ両手で顔を覆うと、そんな深緋を白翔が抱きしめた。グッと肩を抱かれて、その腕は微かに震えていた。ズズ、と白翔が(はな)を啜るのがわかった。白翔も泣いているのだと思った。

 白翔の心音と匂いに包まれ、深緋はひとしきり泣いた。こんなのって無いよ、こんなの酷いよ、と散々泣き言を並べ、気の済むまで泣き続けた。
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