吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)
「もう喋っても良いぞ」

 深緋は固く閉じていた口を開け、ハァ、と息を吐き出した。

「これで私は。人間になれたのですか?」

 最後の血を飲み干した後に感じた温かさ以外は、特別変化が感じられない。そう思うのだが。

 ふとズシリと体に重さを感じて、濃紺の空を見上げた。頭上を明るく照らす満月を見つめ、冷静になる。儀式が終了した今となっては、その恩恵を全く受けていない。

「満月の光に特別力が(みなぎ)ることも、もう無いだろう」

 深緋はコクンと浅く頷いた。

「人血転生の儀で血統を浄化し、人間の血液成分を増加させた。だからと言って、対象者が飲んだ人間の血と繋がりが出来るわけでもない。
 今までおまえの体を満たしていた吸血鬼の血は、人間のものへと生まれ変わったのだ」

 一応の説明を受けて、何となくだが理解した。不意にぶるっと背筋が震えた。

 感じたのは肌を撫でる空気の冷えだった。体の熱はとうに消え去り、半袖の腕に鳥肌が浮く。深緋は両手で腕をさすった。

 それまでアウターを持っていた白翔が駆け寄り、ふわりと深緋に羽織らせる。

「大丈夫か?」
「……あ、うん」

 白翔に手を引かれて窪地を出る。すぐそばに立つ彼を見上げたとき、ドキンと心臓が大きく跳ねた。

 あれ……?

 ドキドキと鼓動が高鳴り、顔の中心が熱くなる。わけがわからず、手で胸を押さえた。

 白翔ってこんなにかっこ良かったっけ?
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