吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)
 急にときめきを覚える心臓にまごついた。確かに白翔はイケメンに違いないが、今までの感じ方とは桁違いに変化している。おずおずと白翔の目を見つめた。僅かに茶色がかった瞳が綺麗で、頭の中がぼうっとする。

 今まで吸血対象だったのが嘘みたいだ。白翔を見てももう食欲は湧かない。

「深緋?」

 反応の薄い深緋を見て、白翔が怪訝な表情(かお)をするが、それすらも愛おしい。目の前でパタパタと手を振られた。

「あの〜……、深緋がちょっとおかしいんですけど……」

 不安に眉を寄せ、白翔がカムイさんに声を掛けた。

「問題ない。人間に生まれ変わった者は皆、連れ合いを見てぼーっとする。単におまえに見惚れているだけだ」
「……え」

 白翔は瞳を左右に泳がせ、照れ笑いを浮かべた。そしてアッ、と思い出したように右手の人差し指を立て、パーカーのポケットに手を突っ込んだ。持参した十字架を出し、深緋の目の前にズイと寄せる。

 十字に(かたど)られたシンプルなオブジェに、深緋は首を傾げパタパタと目を瞬く。

「あれ? 十字架を見ても……何とも思わない……?」
「あははっ! やったぁっ!!」

 白翔が満面の笑みを浮かべて、深緋に抱きついた。喜びのハグに違いないが、途端に恥ずかしくなる。

「ちょっと、白翔っ。一旦離してっ」
「なんで?」
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