吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)
「おはよ」

 彼の血を意識して、少しだけ素っ気ない言い方になる。

『恋に落ちた相手の血は極上』——もう二十年も前に祖母から聞いた言葉を思い出していた。それが本当なら、戸惑うより他はない。

 極上のひと口を味合わせてくれたこの子は、果たして恋の相手と言えるのだろうか?

 大路 白翔が。私の好きな人……?

 わからない。単に若いから、血が新鮮で美味しいのかもしれないし。

 思えばこれまでに、十代の男子の血は飲んだことがないのだ。そう考えたところで、スグルくん以外は、と訂正をする。

 ある日突然、祖母が連れて帰ってきたスグルくんは、当時十七歳だったはず。あの頃飲んだ血の味を思い出そうとして、眉間にシワが寄った。

「深緋……いま何考えてんの?」
「……え」

 走り出した電車に乗り込み、無言を貫いていると、急に白翔が顔を下げ、こちらの表情を覗き込んだ。

「なんか難しそうな顔してるけど……悩みか?」

 悩み。確かにそうには違いないが。

「うるさいなぁ。ほっといて」

 戸惑いから、いつも通りに白翔を見れず、思わずそっぽを向いてしまった。あからさまに嫌な態度を取ってしまい、胸の内がモヤモヤとして落ち着かない。そんな自分が何よりも嫌だった。

 *

 五限は体育だった。女子更衣室で体操服に着替える際、いつものようにロッカーにペンダントを仕舞ってから扉を閉めた。
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