吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)
 スポーツタオルを首にかけ、一度体育館を出た。風に当たって、この息苦しい気持ちを鎮めよう。

 ワァワァと歓声が飛び交う体育館に背を向けて、少しの間、外の階段に腰をおろしていた。

「……朝比奈」

 程なくして、一人の男子に声を掛けられた。振り返ると、同じクラスの八城(やしろ)英明(ひであき)が、体育館を出てすぐのところに立っていた。

 返事もせずにまた前を向く。八城がこちらに近付き、深緋の隣りに腰を下ろした。

「さっきの試合、スゲー良かったよ。朝比奈、大活躍だったじゃん」
「……それはどーも」

 スポーツタオルを口元に当てて、そこに嘆息を吸い込ませる。

「朝比奈は相変わらずクールだよな。ミステリアスって言うか。まぁ、そこが他の女子と違って良いとこなんだけど」

 隣りの八城を見ずに、ただひたすら前方の景色を見つめていた。
 グラウンドに降りる階段が右手下方に続き、階段の手すりの向こうには校舎が建っている。

「あの、俺さ。朝比奈のこと……好きなんだ。……それで。良かったら、付き合ってくれない?」

 勇気を振り絞って告げたひと言なのか、八城の声は若干震えていた。

 そこで隣りの彼をジッと見つめ、一瞬だけ身勝手な考えを巡らせる。

 白翔の血のように、若い男の血が新鮮で美味しいというのなら。この子の血も美味しいはずだ。試してみるか?

 顔を赤らめる彼を見て、即座にその考えを打ち消した。
< 36 / 339 >

この作品をシェア

pagetop