吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)
♯3.見つけたのは厄介な感情で戸惑うばかり。
「やっぱりここにいた」
扉を全開にしたまま、白翔がズンズンと奥まで進み、深緋の手を引いた。未だに制服姿でバスケ部の他のメンバーもいない。部活動ではないのだろうか。
「扉閉まってたけど、大丈夫か? だれにやられた?」
立ち上がってから白翔を見つめ、すぐさま目を逸らした。
「そんなの、白翔には関係ない」
掴まれた手を振りほどき、先ほど音がした体操マットの奥を覗き込む。電気を点けているといっても、自分の体が影になって、よく見えない。
「なにやってんの?」
放っておいて、と言おうとして、口を噤んだ。今は彼の相手をするより、ペンダントだ。
「なんだ、探し物かよ」
そう聞こえてすぐ、目線の先がパッと照らされる。
振り返って見ると、白翔がスマホを手にライトを照らしてくれていた。
「……ありがとう」
ポソッと呟いて、ライトに照らされた床に目を凝らした。見慣れた丸い金属が微かに光を反射した。
「あっ、あった……っ!!」
腕を伸ばし、大きな埃の塊の中から、それをスッと引っ張り上げた。シャラッと音がして、楕円型のペンダントが再び深緋の手に戻る。
手元に帰ってきたペンダントは外蓋のみならず、内蓋までもが開いていた。そのせいで中に収まった小さな写真が、ハラリと手から滑り落ちる。
あっ、と上ずった声がもれ出て、慌てて白翔が拾ってくれる。彼はチラと写真を確認し、深緋の手に握らせた。