恋愛Sim★comp

タクシーに乗って、観光スポットを巡る。
「夜の食事まで、お世話することになっています。」と、タクシーのおじさんは言った。
有名な水族館の事を、比名琴は尋ねている。

小さい頃、お父さんが病気で亡くなり……あまり旅行やテーマパークには行ったことがないと。
昨日の帰り道、遠回しに旅行の話をしたら……君はそう答えた。
俺には言葉が無かった。
俺の心に、少しの霧がかかり……楽しむ君の笑顔がそれを晴らしていく。
愛しい……。

綺麗な海の色を、二人で座って眺めた。
この時、嶋関は空気を読んだわけじゃない。読んだのは、タクシーのおじさんだ。
食べ物で嶋関を引きとめ、俺たちを綺麗な景色に行かせた。
サービス業も大変だ……。
「幾久……。あの別れたときの話をしてもいい?」
「……うん?」
心が痛い。俺だけの感情じゃなく、君の感情にはあえて触れなかった。
怖くて、恐ろしかった。
「あの日から、ホテルで逢う日の間……10日ぐらいね。嶋関さんが、毎日来てくれたの。」
あの、嶋関が?
俺は、色々な驚きで言葉が出なかった。
「本当のことは、私もホテルで逢う日に聞いたの。嶋関さん言ってた……大丈夫だよ、幾久くんを信じて欲しいって。」
比名琴は、俺に微笑む。
「別れを迫った会社の人が、私たちの心配をする。ふふっ。本当のことを聞いて、怒りよりも嬉しさの方が大きかった。嶋関さんのおかげね。それと、もう一つ。文一と同じように、弱っているときに優しくされたら……私の心も変わったかもしれない。けど、それが無いのも……嶋関さんだから、かな?……優しくしてあげてね」
嶋関に感謝しつつ、嫉妬した。
「……嶋関って、不思議だよね。俺の担当以外は、勤まらない気がするよ」と、照れ隠しに偉そうに言ってみた。
君は、嬉しそうに微笑む。
静かな波の音……見つめ合う二人が、同じことを望む。
分かる……比名琴の眼が、言ってる。
俺は、顔をゆっくり近づける。
手を重ね、目を閉じ気味に……唇に触れ重なる。

「幾久く~ん」



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