恋愛Sim★comp
そう、病院で初めて知った。
同情で、父母に頼まれ引き受けた小説。
「あ、先に名前を訊いても良い?」
契約には、名前がいるからね♪
「え……。あぁ~~。はぁ。」
何かを考え、戸惑い、諦めた感じ?
「荻原 比名琴(はぎわら ひなき)」
「どんな漢字を書くの?」
「比べる名前の名に琴。」
説明慣れしている。
確かに、人から訊かれる頻度の多そうな名前だ。
「おばあちゃんがつけてくれたの。」
今までに無い、柔らかな表情。
彼女の本質……デレだな。
「良い名だ。意味があるんだろ?教えてよ。」
頬を染め、嬉しそうに答える。
「人と比べる事無かれ。名は体(人)を表す。人と同じことは、いい事ばかりではない。自分らしさを強くもて。琴は、当て字。琴のような、音色を思わせるような女の子って、関係ない!」
散々、自分が語ってきたのに……何を急に恥ずかしくなったのか、ツンが出た。
ははっ、可愛い!もう、この子に確定♪
「じゃ、契約締結ね。」
ヒナキの否定の言葉を遮る、絶妙なタイミングで【携帯の着信音】が鳴り響く。
使えない担当だった。
「……あぁ、待ってるから。5分以内に来て。それ以上は、待たないから!」
厳しい口調で、言い放つ。
仕事だ♪
使えない担当、嶋関(しまぜき)が喫茶店に到着。
「遅い。30秒、オーバー。」
机の横に、息を切らせた嶋関を立たせたままコーヒーを飲む。
普段、そんな偉そうなことをするわけではない。
ただ、怒りを持っていたのは事実で八つ当たりもあった。
が、目的は今回の契約を勧めることだ。
俺の話が現実的で、彼女を追い詰める雰囲気を作り出すのだ。くふふ……
「あの、座って……」
彼女の台詞を遮る。
「君は、黙ってて。嶋関さん、彼女に話の展開を協力してもらうことにしたから。」
擬似恋愛の話を、手短に伝えた。
使えない担当のくせに、この時ばかりは正論だった。
「あの……大事なことが抜けてますよ?」
この台詞に、俺と彼女は不思議そうな顔で嶋関を見つめた。
「恋愛は、“好き”がないと現実的ではない。」