蒼穹の覇者は、激愛で契約妻と秘密の我が子を逃がさない
◇◇◇
悠眞は、ホテルの部屋に入るとベッドに倒れ込んだ。
昨日、宮木に玲奈の居場所を教えてもらい、そのまま玲奈たちが暮らす土地まで駆け付けた。
彼女ときちんと話し合いたいと思うからこそ、冷静になるために、駅前のビジネスホテルに宿を取り、一夜明けてバウムクローネを訪ねようとしたら子供と一緒に道を歩く玲奈を見かけた。
それで理性を失い駆けよった結果が、これである。
「なにやってんだよ俺は……」
悠眞は唸って目を閉じた。
そうやってこれまでのことを思い返すと、自分の全てが腹立たしい。
玲奈とふたりの子供に明確な拒絶を示され、立ち去るしかなかった自分が不甲斐なくて腹立たしい。
子供の存在に気付かず、生まれてからこれまでなにひとつ手を貸したことのない自分に、あの双子の父親を名乗る資格などないと頭ではわかっていた。それでもあんなふうに泣かれてしまうとショックを隠せない。
そしてなにより、そんなふうに泣きじゃくる子供たちを庇うように抱きしめる玲奈の姿に、出会った日のことを思い出して、悠眞は言葉にしようのない切なさを覚えていた。
四年前の春、悠眞の髪についた桜を丁寧に取ってくれる玲奈を見上げたとき、桜の花のようだと思ったことは今でもよく覚えている。
光を求めて太陽に向かうのではなく、見上げる人のために下を向いて咲く桜は、玲奈の優しい雰囲気によく似ていると思ったのだ。
この三年間、そうやって玲奈はひとりで子供たちを守ってきたのだと思うと、後悔してもしきれない。
(どうしてあの時、環境を整えてから玲奈を迎えに行けばいいなんて思ってしまったのだろうか)
これまで悠眞は、置き手紙などの状況から、玲奈は自分の意思で実家に帰ったのだと思い込んでいた。
だけど瑠依奈から話を聞き出すうちに、自分が重大な勘違いをしていたことに気付かされた。
自分に都合よく話を歪曲してはいたが、瑠依奈の発言の中で信憑性が高いと思われる言葉をつなぎ合わせていくと、瑠依奈親子に対抗心を燃やしていた玲奈の両親は、彼女を資産家に嫁がせようとしていたらしい。
だが縁談が進む中で玲奈の妊娠が発覚し、破談となった。その後の玲奈は、両親に家を追い出され、姿を消したのだとか。
それらの事情を知れば、悠眞には、あの日の景色が違ったものに見えてくる。
慣れない海外での暮らしが不安になって、実家に戻ったというならまだ納得がいく。だけど玲奈が、今さら両親の決めた縁談を素直に受け入れるわけがない。
実家に帰ったというのも、両親に騙されたか、強引につれもどされたといったとこなのだろう。
悠眞としては、約一年離れたことで、両親もこれまでのことを改心して玲奈を受け入れたのだと思い込んでいた。
自分が家族と良好な関係を築いているだけに、実の娘に二度も強引な縁談を強いるなんて考えてなかったのだ。
「それならそれで、俺との関係を両親に話してくれればよかったのに……」
当時の鷹翔グループは、確かにかなりの危機的状況にはあったが、それでも表向きは一流企業として名を馳せていた。
だからお腹の中の子の父親が鷹翔グループの御曹司と知れば、彼女の両親なら、間違いなく悠眞にコンタクトを取ってきたはず。
それをしなかったということは、玲奈は、自分の両親にもなにも語っていないということだ。
玲奈の人柄をよく知る悠眞としては、そこに彼女の深い愛情を感じる。
きっと玲奈のことだ、鷹翔グループの事業立て直しに奔走する悠眞に迷惑をかけてはいけないと思ったのだろう。
「玲奈、相変わらず君は、桜の花のような人だ」
だからこそ、拒絶されたからといって諦めることなんてできない。
玲奈や子供たちが、今さら父親面するなというのであれば、他人としてで構わないから、三人の人生に関わらせてほしい。
そのためにはまず、玲奈と話し合うところから始めなくてはいけないのだが……。
その時不意に、マットレスの放り出しておいたスマホが振動した。
画面を確認すると、瑠依奈からのメッセージが表示されている。
昨夜も当然のように、彼女から会いたいというメッセージをもらった。
玲奈の居場所を知った今、彼女の相手をするつもりはないと無視したが、彼女は何度も会いたいとメッセージを送ってきて、今度は玲奈から子供ことで相談を受けたなどという噓が書かれている。
玲奈が、彼女に相談するわけがない。
ため息をついて画面を閉じようとすると、今度は瑠依奈から電話がかかってきたがそれも無視して、スマホをマナーモードからサイレントモードに切り替える。
(子供の話に反応してしまったのは、失敗だったな)
悠眞としては、それが悔やまれてならない。
普段の悠眞なら、相手に弱点を悟らせるようなミスはしないが、玲奈に子供がいるという思いがけない情報に、動揺してしまった。
それで瑠依奈には、玲奈の子供の父親が誰なのかを気付かれてしまった。
もちろん悠眞はその事実を隠すつもりはないし、玲奈が望んでくれるのであれば、喜んで認知もさせてもらう。
だけどそれを公にすることが、玲奈の迷惑になるのであれば話は別だ。
結果としてはよかったのだが、もともと瑠依奈は、玲奈の縁談を強引に横取りするような非常識な人間なのだ。そんな彼女に双子の父親が悠眞と知られて、玲奈や子供たちにどんな影響を与えるか考えると気が休まらない。
「そうだ……」
とある解決策を思いついた悠眞は、瑠依奈の着信が途切れるのを待ってスマホを操作していく。
悠眞は、ホテルの部屋に入るとベッドに倒れ込んだ。
昨日、宮木に玲奈の居場所を教えてもらい、そのまま玲奈たちが暮らす土地まで駆け付けた。
彼女ときちんと話し合いたいと思うからこそ、冷静になるために、駅前のビジネスホテルに宿を取り、一夜明けてバウムクローネを訪ねようとしたら子供と一緒に道を歩く玲奈を見かけた。
それで理性を失い駆けよった結果が、これである。
「なにやってんだよ俺は……」
悠眞は唸って目を閉じた。
そうやってこれまでのことを思い返すと、自分の全てが腹立たしい。
玲奈とふたりの子供に明確な拒絶を示され、立ち去るしかなかった自分が不甲斐なくて腹立たしい。
子供の存在に気付かず、生まれてからこれまでなにひとつ手を貸したことのない自分に、あの双子の父親を名乗る資格などないと頭ではわかっていた。それでもあんなふうに泣かれてしまうとショックを隠せない。
そしてなにより、そんなふうに泣きじゃくる子供たちを庇うように抱きしめる玲奈の姿に、出会った日のことを思い出して、悠眞は言葉にしようのない切なさを覚えていた。
四年前の春、悠眞の髪についた桜を丁寧に取ってくれる玲奈を見上げたとき、桜の花のようだと思ったことは今でもよく覚えている。
光を求めて太陽に向かうのではなく、見上げる人のために下を向いて咲く桜は、玲奈の優しい雰囲気によく似ていると思ったのだ。
この三年間、そうやって玲奈はひとりで子供たちを守ってきたのだと思うと、後悔してもしきれない。
(どうしてあの時、環境を整えてから玲奈を迎えに行けばいいなんて思ってしまったのだろうか)
これまで悠眞は、置き手紙などの状況から、玲奈は自分の意思で実家に帰ったのだと思い込んでいた。
だけど瑠依奈から話を聞き出すうちに、自分が重大な勘違いをしていたことに気付かされた。
自分に都合よく話を歪曲してはいたが、瑠依奈の発言の中で信憑性が高いと思われる言葉をつなぎ合わせていくと、瑠依奈親子に対抗心を燃やしていた玲奈の両親は、彼女を資産家に嫁がせようとしていたらしい。
だが縁談が進む中で玲奈の妊娠が発覚し、破談となった。その後の玲奈は、両親に家を追い出され、姿を消したのだとか。
それらの事情を知れば、悠眞には、あの日の景色が違ったものに見えてくる。
慣れない海外での暮らしが不安になって、実家に戻ったというならまだ納得がいく。だけど玲奈が、今さら両親の決めた縁談を素直に受け入れるわけがない。
実家に帰ったというのも、両親に騙されたか、強引につれもどされたといったとこなのだろう。
悠眞としては、約一年離れたことで、両親もこれまでのことを改心して玲奈を受け入れたのだと思い込んでいた。
自分が家族と良好な関係を築いているだけに、実の娘に二度も強引な縁談を強いるなんて考えてなかったのだ。
「それならそれで、俺との関係を両親に話してくれればよかったのに……」
当時の鷹翔グループは、確かにかなりの危機的状況にはあったが、それでも表向きは一流企業として名を馳せていた。
だからお腹の中の子の父親が鷹翔グループの御曹司と知れば、彼女の両親なら、間違いなく悠眞にコンタクトを取ってきたはず。
それをしなかったということは、玲奈は、自分の両親にもなにも語っていないということだ。
玲奈の人柄をよく知る悠眞としては、そこに彼女の深い愛情を感じる。
きっと玲奈のことだ、鷹翔グループの事業立て直しに奔走する悠眞に迷惑をかけてはいけないと思ったのだろう。
「玲奈、相変わらず君は、桜の花のような人だ」
だからこそ、拒絶されたからといって諦めることなんてできない。
玲奈や子供たちが、今さら父親面するなというのであれば、他人としてで構わないから、三人の人生に関わらせてほしい。
そのためにはまず、玲奈と話し合うところから始めなくてはいけないのだが……。
その時不意に、マットレスの放り出しておいたスマホが振動した。
画面を確認すると、瑠依奈からのメッセージが表示されている。
昨夜も当然のように、彼女から会いたいというメッセージをもらった。
玲奈の居場所を知った今、彼女の相手をするつもりはないと無視したが、彼女は何度も会いたいとメッセージを送ってきて、今度は玲奈から子供ことで相談を受けたなどという噓が書かれている。
玲奈が、彼女に相談するわけがない。
ため息をついて画面を閉じようとすると、今度は瑠依奈から電話がかかってきたがそれも無視して、スマホをマナーモードからサイレントモードに切り替える。
(子供の話に反応してしまったのは、失敗だったな)
悠眞としては、それが悔やまれてならない。
普段の悠眞なら、相手に弱点を悟らせるようなミスはしないが、玲奈に子供がいるという思いがけない情報に、動揺してしまった。
それで瑠依奈には、玲奈の子供の父親が誰なのかを気付かれてしまった。
もちろん悠眞はその事実を隠すつもりはないし、玲奈が望んでくれるのであれば、喜んで認知もさせてもらう。
だけどそれを公にすることが、玲奈の迷惑になるのであれば話は別だ。
結果としてはよかったのだが、もともと瑠依奈は、玲奈の縁談を強引に横取りするような非常識な人間なのだ。そんな彼女に双子の父親が悠眞と知られて、玲奈や子供たちにどんな影響を与えるか考えると気が休まらない。
「そうだ……」
とある解決策を思いついた悠眞は、瑠依奈の着信が途切れるのを待ってスマホを操作していく。