Dearest My Lady
央は苦笑を浮かべながら、視線を紬に向けた。紬は思わず頬が緩み、ももの頭を軽く撫でながら胸の高鳴りを少しだけ落ち着ける。ももの無邪気な甘えが、緊張と痛みに似た感情を和らげてくれた。
「月城ももちゃん。お会計をお願いしまーす」
受付からの声に、央がゆっくり立ち上がる。紬はももとその場に残り、自身に寄りかかるももに手を添えていた。
「そういえば、もう少ししたら春になるけど」
会計から戻ってきた央の声が軽く弾む。顔を上げると、穏やかな笑みの奥に、いつもより少しだけ真剣な光が宿っていた。
「紬ちゃんの誕生日、今年も絶対に俺に祝わせてほしいんだ」
誕生日は毎年、央が必ず祝ってくれる。幼い頃から続く恒例の約束。いつもなら素直に頷けるのに、今日の央の言葉にはどこか圧のようなものを感じた。
「当日は土曜日だから、仕事も午後で終わるよね?その後の時間は俺にちょうだい」
「え?うん……もちろんいいけど……」
「約束だからね。絶対だよ」
「う、うん……」
(毎年のことなのに……なんで、今年はこんなに念を押すんだろう)
紬は小さく首を傾げた。これまでも誕生日を祝ってくれるのはもはや恒例のようなものだったのに、今日の彼の言葉には、どこかいつもと違う圧があった。