Dearest My Lady
その夜も、自宅の寝室でベッドの端に並んで腰掛けていた。
リビングから聞こえていたももの足音もいつの間にか穏やかな寝息に変わり、部屋は柔らかな間接照明だけに満たされている。
「今日ね、珍しく会社で父さんから呼び出されたんだ」
そんな静かな空気の中、央が何気ない調子で切り出した。
「今回の件、社内でもすごい評価が高いらしくて、次の展開も早いうちに動き出す方向性で役員会議で決まったんだって」
「本当?すごい!なっちゃん、おめでとう!」
「ありがとう。それで、紬ちゃんにもお礼が言いたいから会いに来て欲しいって。あ、でも、伊澄さんに言うと小言が煩いから内緒でお願いとも言ってたよ」
「ふふ、なにそれ」
思わず吹き出すように、くすりと笑い、そのまま自然に央の手を取る。指先に触れた体温が心地よくて、ぎゅっと指を絡めた。
「今度本社に行くときに、時間が合えば伺わせてもらうね。でも……会社で社長としての巴琉さんに会うのは初めてだから、ちょっと緊張するな」
「仕事って口実つけて、君に会いたいだけだよ」
少し間を置いてから、央は続けた。
「……もちろん、仕事としても評価してる。紬ちゃんが積み上げてきたものは、ちゃんと届いてるんだよ」
穏やかな声だった。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。紬は繋いでいた指先をもう一度確かめるように深く絡め、小さく息を吐いた。
「……これで、ようやく」
隣に立つ央を見上げて、言葉を続ける。
「私……自信を持って、なっちゃんの隣に立てる気がするよ」