Dearest My Lady
epi.7
あの日から、二年余りが過ぎていた。
月城グループ本社の上階フロアにある大会議室には、天井まで届く大きな窓から柔らかな光が差し込み、長いテーブルの向こう側には、役員たちがずらりと並んでいる。
視線が集まる前方でスクリーンを背に立つ紬は手元のタブレットに目を落とし、落ち着いた声で説明を続けた。
「こちらが、今期から本格的に導入するリハビリ滞在型ホスピタリティプログラムの運用案です」
スクリーンには、月城グループが所有する郊外施設を改修したリハビリ滞在専用拠点の全体図が映し出されていた。資料には、動物の回復段階に合わせたケア体制の流れも示されている。
「治療を終えた直後の動物や、長期間の保護生活で心身に負担を抱えた個体を対象としています。目的は譲渡ではなく、まずは回復と安定に専念できる時間を提供することです」
役員たちは資料とスクリーンを交互に見ながら静かに耳を傾けた。
「医療行為については、これまでどおり提携動物病院と連携します。ただ、日々の生活環境──音や明るさ、人との距離感については、この施設の理念として運営側が責任をもって整える必要があります」
紬はゆっくり視線を上げた。
「これは治療ではありません。しかし、月城グループが大切にしてきた“心地よく過ごすための工夫”を、動物の回復の時間にも生かす取り組みです」