Dearest My Lady

「私もね、普通の家庭の出身なんだ。ハルちゃんとはもともと私の兄の親友って縁で知り合って、幼馴染みたいな関係になったの。紬ちゃんと央の関係と、少し似てるかもしれないね」

懐かしさを含んだ声音に、紬は自然と背筋を正す。

「けど……結婚前に色々あってね、本当にたくさん言われた。“玉の輿“って揶揄もされたし、能力も覚悟も何もかも足りなくて、当時関わってたプロジェクトで足手まとい扱いされたこともあった」

胸の奥がきゅっと締めつけられる痛みを感じながら、紬は黙って耳を傾ける。

「それでもね、私はずっとハルちゃんを信じてた。彼が“守る”って言ってくれた言葉を、疑わなかった」

言い切った瑠璃は、ふっと穏やかに笑う。

「私はね、守られることって弱さじゃないと思うの。むしろ……守られるのにだって覚悟がいる。相手の立場が高ければ高いほど、背負っているものが大きければ大きいほど。紬ちゃんみたいに誠実でいようとする人ならなおさら、ね」

「……はい」

小さく返した声に、瑠璃はゆっくりと頷いた。

「だよね。でも私は、彼を信じるって決めてから、その安心があったから前に進めた。挑戦もできたし、こうして今、彼を支えられる立場にも立てたの」

今の彼女は月城グループ専務であり、広告関連事業を率いる立場。その肩書きを思えばこそ、その言葉には揺るぎない重みがあった。

「紬ちゃんはとっても優秀だよ。努力も結果も、ちゃんと自分で掴んできた人。でもね──」

瑠璃は少し身を乗り出し、穏やかに続ける。
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