Dearest My Lady
その一言を聞いた瞬間、紬の胸の奥で、とくん、と小さな音が鳴る。
不思議なほどに、央の言葉だけは何度聞いても慣れてくれない。世界中の誰にどんな言葉を向けられても、彼の「綺麗」だけが、こうして心のいちばん深いところに触れてくる。
(私……こんなにも、なっちゃんのことが大好きになってたんだ)
嬉しさが、じんわりと身体に広がっていく。
「……なっちゃんだって、素敵だよ」
そう返す声は少しだけ震えていて、頬は熱かった。
紬の素直な言葉に央は一瞬きょとんと目を瞬かせ、それから耐えきれないように小さく肩をすくめた。
「……紬ちゃんが褒めてくれただけで世界一幸せな気分になるんだから、ほんと、どうしようもないね」
「ふふ。それはお互いさまだよ」
そう返すと、二人のあいだに自然と柔らかな笑みが交わされた。まるで今この瞬間を、ひとつ残らず心に刻みつけようとしているみたいに。
──そのとき、控え室の外から、穏やかなノック音が響いた。
「新郎新婦様、お時間です」
スタッフの声に、空気がふっと引き締まる。
紬は小さく息を吸い、ゆっくりと深く吐いた。
胸の高鳴りが強まっていく。これまで積み重ねてきた時間と、これから始まる時間が重なり合う、その境目に立っているのだという実感がいよいよ強くなる。
しかしその緊張をすくい取るように、央が一歩近づき、そっと紬の手を取った。
「……行こうか」
その手の温もりに背中を押されるように、紬は自然と頷いた。