Dearest My Lady
それでも、視界が淡く霞む中で——ただ一人、はっきりと浮かび上がる輪郭がある。
バージンロードの先に立つ、央だった。
父とともに歩みを進める。白い道の先で、央は覚悟と慈しみを宿した眼差しで、まっすぐに紬を見つめていた。
(……なっちゃん)
彼の姿を目にするだけで、心がやわらかくほどけ、確かな安心がゆっくりと満ちていく。
祭壇の手前で、父が足を止めた。そして紬の手を、そっと央の手へと導く。
「……娘を、頼んだ」
父の声は低く、思いを噛みしめるようだった。央は深く頭を下げ、迷いのない声で応える。
「必ず幸せにします」
その言葉に父は一瞬だけ目を伏せ、それから静かに一歩身を引いた。
紬は父の腕を離れると、今度は央の手を取る。彼の温もりが、指先から胸の奥までまっすぐに伝わってくるようだった。
顔を上げると、祭壇の脇には白いリボンを首元に結んだももが佇んでいる。
凛とした佇まいで静かに座していた彼女は、紬を見つけた瞬間ちぎれんばかりに尻尾を振る。けれど、自分の役割を分かっているかのように、いつものように飛びついてくることはなかった。