Dearest My Lady

それでも、視界が淡く霞む中で——ただ一人、はっきりと浮かび上がる輪郭がある。

バージンロードの先に立つ、央だった。

父とともに歩みを進める。白い道の先で、央は覚悟と慈しみを宿した眼差しで、まっすぐに紬を見つめていた。

(……なっちゃん)

彼の姿を目にするだけで、心がやわらかくほどけ、確かな安心がゆっくりと満ちていく。

祭壇の手前で、父が足を止めた。そして紬の手を、そっと央の手へと導く。

「……娘を、頼んだ」

父の声は低く、思いを噛みしめるようだった。央は深く頭を下げ、迷いのない声で応える。

「必ず幸せにします」

その言葉に父は一瞬だけ目を伏せ、それから静かに一歩身を引いた。

紬は父の腕を離れると、今度は央の手を取る。彼の温もりが、指先から胸の奥までまっすぐに伝わってくるようだった。

顔を上げると、祭壇の脇には白いリボンを首元に結んだももが佇んでいる。

凛とした佇まいで静かに座していた彼女は、紬を見つけた瞬間ちぎれんばかりに尻尾を振る。けれど、自分の役割を分かっているかのように、いつものように飛びついてくることはなかった。
< 118 / 122 >

この作品をシェア

pagetop