Dearest My Lady
最前列で、両親が並んでこちらを見ている。母は涙を伝わせながらも笑っていて、父はそんな母の肩を静かに抱いていた。
少し視線をずらすと瑠璃が感極まったようにぐずぐずと泣きながらハンカチを握りしめ、巴琉は穏やかに深い満足を湛えた拍手を送りながら、時折瑠璃の頭を撫でていた。
「お兄ちゃん、紬ちゃん!おめでとう〜!」
「本当におめでとう。お幸せに」
麗は誰よりも大きな拍手と笑顔で応え、その隣で宝は留袖姿で上品に、けれど心から祝福するように手を打っていた。
一番後には庵の姿もあり、軽く肩をすくめ、無言で拍手をしている。多くは語らずとも、その態度が祝福であることは、紬の目にはきちんと伝わった。
——こんなにも私は、みんなから愛されている。
そう思った瞬間、胸がいっぱいになり、涙がこみ上げそうになる。その気配を察したのか央がそっと身を寄せ、耳元で囁いた。
「……家族だけの式にしておいてよかったね」
その言葉に、紬は素直な微笑みを返す。
「……うん」
そう答えると、央もどこか照れを滲ませながら、隠しきれない幸せを浮かべて微笑んだ。
その足元で、ももが静かに一歩前へ進み出る。振り返り、こちらを待つようにゆっくりと尻尾を揺らしていた。その背中は、まるでこの先を導き、ふたりの門出を見届ける存在であるかのようだった。
央はそんなももの頭をやさしくひと撫ですると、紬へ向き直り、改めて手を差し伸べる。
「いこっか」
家族に見守られ、祝福に包まれながら、ふたりと一匹でこれからの人生を歩いていく
鳴りやまぬ拍手の中、三人は揃って一歩を踏み出した。
——それは、恋人だった時間を胸に抱いたまま、「夫婦」という新しい物語へ進む、確かな第一歩だった。