Dearest My Lady

その後に続いた披露宴は、月城グループらしい華やかさと絢爛さ包まれていた。会社関係者や来賓からの祝辞、重なるグラスの音、途切れることのない挨拶の波。

それらに笑顔で応え続けるうちに、時間の感覚は次第に曖昧になっていく。

すべての進行を無事に終え、ひと区切りがついた頃。次の予定までのほんのわずかな空白の時間を縫うようにして、ふたりは庭園へ足を運んだ。


時刻は、昼と夕方の境目。

傾き始めた陽射しが、白い石畳と木々の葉先をやわらかく染めている。

庭園の奥、蔦の絡むアーチの下で、ふたりは肩を寄せて腰を下ろした。祝宴の喧騒は遠く、ここには午後の光と静けさだけが残っている。

「お疲れさま、紬ちゃん」

その一言に、少しだけ張りつめていたものがほどけた。紬は小さく息を吐き、肩から力を抜く。

「……そうだね。ちょっとだけ、疲れちゃった」

苦笑まじりにそう零す。取り繕う必要も、強がる理由も、今はもうなかった。

以前なら、央の立場や周囲の視線を思ってこの言葉さえ飲み込んでいたはずだ。“慣れなきゃ”“ちゃんとしていなきゃ”──そう、自分に言い聞かせて。

けれど今は違う。

紬はそっと身体を傾け、央の胸元へ身を預けた。応えるように、背後から回された腕がやさしく包み込む。

ドレス越しに伝わる体温が、胸の奥へゆっくりと満ちていく。

「……どうしよう」

「え?」

「素直な紬ちゃんが可愛くて、このまま攫いたくなって困ってる」
< 121 / 122 >

この作品をシェア

pagetop