Dearest My Lady
ソムリエが慎重にグラスへと赤を注ぐ。液面がゆらりと揺れ、テーブルのキャンドルの光を受けて、深いルビー色の輝きを返した。ほのかに立ちのぼる香りが、花と果実のあいだを漂う。
ほどなくして前菜が運ばれてきた。白い皿の上には、春野菜とホタテのマリネ。繊細なソースが淡い彩りを添え、食器に映る光さえ、ひとつの演出のようだった。央はその様子を見ながら、ゆっくりと紬の方へグラスを差し出す。
「誕生日おめでとう、紬ちゃん」
「うん。ありがとう」
軽くグラスが触れ合い、澄んだ音がふたりのあいだで小さく弾けた。その瞬間、央の笑みがどこかやわらぎ、ワインよりもずっと深い色を宿したように見えた。
食事はゆっくりと進んでいった。前菜、魚料理、肉料理──どれも繊細で、口に運ぶたびに春の香りが広がる。
ワインを少しずつ飲みながら、紬は自然と笑みをこぼしていた。いつも通り穏やかに話す央はひとつひとつの仕草に気品が漂っていて、気づけば視線が吸い寄せられていた。
ふと、その視線に気づいた央が首をかしげる。
「……どうしたの?」
央がワインを置いて、静かに首を傾げる。
「ううん。なっちゃん……ほんとにおっきくなったなあって思って」
紬の言葉に、央は少し目を瞬かせる。