Dearest My Lady
「そ、そんなこと……突然言われても……」
「うん。それはごめんね」
「……っ、本気、なの…?」
「うん」
央の声は柔らかいのに、揺るぎがなかった。撤回する気配も冗談めかした色も一切ない。その真剣さが、かえって紬を追い詰めるように胸を締めつける。
そしてようやく、言い訳のような言葉が口からこぼれた。
「……ち、ちょっと待って…!そんなの無理だよ…!」
「どうして?俺のこと嫌い?」
「違う!」
考えるより先に、反射的に否定の言葉が飛び出した。息を呑み、自分でも驚く。けれど本能が、央を拒めないでいた。
「だ、だって…!私はただの一般人で…っ、なっちゃんの家みたいな立派な家の人となんて、釣り合わないよ……!」
「そんなこと関係ない。紬ちゃんじゃないなら、俺は一生結婚するつもりないから」
「……っ」
(そんな……そんなの、ダメに決まってる…!)
歴史ある名家の長男が言っていいことじゃ無い。そんなこと、世間が許すはずがない。家の重圧も、親の期待も、跡継ぎとしての立場も、全部背負って生きてきた彼が、そんな選択をしていいはずがない。