Dearest My Lady
「……え、ここって……」
「うん。ここで少し話したい人たちがいるんだ」
「ひ、人たちって……?」
問いかけた声がわずかに震える。けれど央は答えず、静かに車のドアを開けて紬に手を差し出した。
その手を取るしかなくて、紬は小さく息を呑む。
敷き詰められた石畳を歩きながら、周囲の光景を見渡す。手入れの行き届いた庭、夜でも淡く灯されたアプローチライト、玄関前に並ぶ高級車の列──どれを取っても、一般的な“家”とはかけ離れている。
そして、視線の先に見えた大きな門構えに、紬は息をのんだ。
月城家本邸。幼いころから何度も遊びに来た、央の実家。けれど今こうして並んで立つと、見慣れたはずの景色がまるで違って見えた。
玄関の扉が開いた瞬間、明るい光があふれ出た。その中に立っていたのは──
「やっと来たか」
本来、この家にいるはずのない紬の弟の庵だった。
「え、いお?なんでここに……」
「そいつに呼び出されたんだよ。迷惑なことにな」
庵の視線の先には央が立っている。堂々とした態度の央を前に、庵の不躾な言葉はまるで通じないかのようだった。
「随分と可愛い性格になったじゃないか、庵。もうみんな揃ってるか?」
「全員応接にいる。俺は一服してから戻るからはよ行け」