Dearest My Lady

次女の(うらら)はにやにやと身を乗り出し、長女の(たから)は着物姿のまま、頬に手を当て小首を傾げながら言葉を添える。双子の息の合った掛け合いに、場の空気がいっそう和やかになる。

そんな2人の横で、央の父である月城巴琉(はる)が、勝ち誇ったような笑みを紬の父に向けた。

「可愛い愛娘をもらっちゃって悪いなあ、天城」

その挑発めいた笑顔に、父は微動だにせず、鋭く睨み返す。

「はあ?誰もやるなんて言ってねえわ。寝言は寝て言え」

一方はグループ企業の代表として悠然と構え、もう一方は長年の信頼を背景に冷静な顧問弁護士として座す。そのやり取りの裏には、互いをよく知る者同士だけが交わせる遠慮のない信頼が見え隠れしていた。

紬の父は、かねてより巴琉の顧問弁護士を務めており、その縁もあって、紬は幼いころからこの月城邸に何度も出入りしてきた。家族ぐるみの付き合いはもう長く、この空気の親密さも、そんな積み重ねの上にあるものだ。

──けれど今だけは、それも少し違って見える。

同じ冗談でも、“嫁にもらう”という現実を前にすると、ひとつひとつの言葉が妙に重く響いた。

巴琉がさらに父をからかおうと口を開きかけたところで、瑠璃が夫の肩にそっと手を置き、穏やかに釘をさす。

「大人げないよ、ハルちゃん……」
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