Dearest My Lady
epi.3


指輪を受け取ったあの日から、紬の生活は少しずつ、しかし確実に変化していった。

家族への報告と同時に婚約が正式に決まり、書類の手配や、記念写真の撮影、正式な婚約の記録としての段取りが次々と紬の前に積み重なっていく。

ふと気づくと、朝の出勤前から夜の寝支度まで、紬の一日は“月城家の婚約者”を意識させる予定で埋め尽くされていた。

そんな慌ただしさの中で、央との同棲も始まった。

暮らす場所は、月城グループが所有する高級ホテルのプライベートエリア。その中でも、ごく限られた一族しか出入りを許されない特別区画。

一般客どころか、グループ役員すら足を踏み入れられない“家族専用フロア”。外の世界と切り離されたその空気は、華やかさよりも静謐さと重厚さの方が強く漂っていた。

央と紬に与えられたのは、その最上階のフロア全体。新居の準備が整うまでの、いわば一時的な住まい──そう説明は受けていたけれど、実際の光景は“仮”という言葉からほど遠かった。

部屋の扉を開けた瞬間、紬は息を呑んだ。
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