Dearest My Lady
午前の診察が始まる前に、紬は自ら院長に報告し、今後もこれまで通り仕事を続けたいことを伝えた。院長は驚きながらも穏やかに受け止め、「無理のないようにね」と温かく頷いてくれた。
そして、午前の診療が始まろうとしたその直前だった。
受付のスタッフが、どこか浮き足立った様子で院長室へ入ってきた。
「天城先生!月城さんがいらっしゃいましたよ!院長にもご挨拶したいそうです!」
「えっ」
慌ただしい朝の空気の真ん中に、思いがけない名前が落ちてきた。スタッフたちの視線が一斉に集まり、室内の時間がほんの少し止まったように感じられる。
やがて、自動ドアが静かに開く。紺のスーツに身を包み、秘書らしき男性を伴った央の姿が現れた。早朝の診療時間前に突然訪れたことに、スタッフの胸中には驚きと緊張が交錯する。
「突然の訪問で失礼いたします」
低く落ち着いた声が、緊張を帯びた院内の空気を静かに整えた。彼の態度はいつも通りの穏やかさを保ちながらも、どこかフォーマルで、紬はその横顔に思わず背筋を伸ばした。
央はそのまま院長室へ通され、紬も半歩後ろに控えるようにしてそばに立った。
朝の診療前で、慌ただしい時間帯。それを理解している央は、椅子に腰かける前に深く頭を下げた。