Dearest My Lady
紬に笑顔を向けると、央はすぐに隣に立つ男性に視線を戻す。書類を手に取り、手短にやり取りを始めるその姿は、どこか落ち着いた大人の空気をまとっていた。
「今週の進捗、各チームからの報告は揃ってる?」
「はい、午前中に各ホテル部門からまとめました。追加で確認が必要な資料もこのフォルダに入れてあります」
「ありがとう。午後の収支数字も踏まえて、明日の会議用の資料に反映しておいてくれるかな」
「承知しました。明日の朝までには準備完了させます」
「助かるよ。今回の案件は重要だから、細かい修正も気を抜かずに頼むね」
「了解です。社長の確認も通していますので問題ありません」
思わず立ち止まり、二人の間に流れる緊張感のあるやり取りを見つめる。息遣いも言葉の間も整然としていて、見ているだけで背筋が伸びる思いだった。
やがて男性は手早く書類をまとめると央に対して頭を下げ、紬にも一礼をしながらその場を去った。
その瞬間、央の表情が仕事の顔から柔らかなものに変わる。紬の方に歩み寄り、微かに首をかしげながら甘い笑みを向ける。
「ごめんね、俺たちが邪魔で通れなかったよね」
「そ、そんなこと……むしろ、私こそ邪魔になってごめんなさい」
「紬ちゃんが邪魔なんて絶対に有り得ないよ」