Dearest My Lady
「入社してまだ三か月くらいなのに、大変だね……」
「そうでもないよ。会社の事業については昔から叩き込まれてきてたし、学生の頃にはすでに今の事業部のプロジェクトにも参加してたんだ。新規ホテルの企画に触れたり、運営改善の現場を見たりね。そんな経験があったから、今の仕事がやりやすいだけ」
「……そっか…」
紬は、普段とは違う“責任ある大人の男性”としての央の一面に、胸の中で不思議な高揚を覚えた。
エレベーターの静かな重低音に包まれながら、二人は最上階に向かう。照明に照らされた狭い空間の中、紬はこの後の二人だけの時間を意識せざるをえなかった。
まもなくしてエレベーターが静かに停止し、最上階の扉が開いた。見慣れたはずの廊下なのに、央と話した余韻が胸の奥をやわらかく揺らしているせいか、どこか違う空気に感じる。
央はいつものように紬の歩幅に合わせて歩き、住み慣れたスイートルームのドアを開けた。
部屋の照明は柔らかく、落ち着いた香りがほんのり漂っている。どれもこの数ヶ月、一緒に暮らしてきた“ふたりの生活”そのままの風景だ。
「わん!」
ももがぱっと飛び出すように駆け寄り、しっぽをちぎれそうなほど振りながら足元にまとわりつく。
「もも、ただいま。今日もいい子にしてた?」