Dearest My Lady
数日が過ぎ、久しぶりにゆったりとした休日の朝が訪れた。
ホテルの窓から差し込む光はどんよりとして、灰色の空が街を覆っている。部屋の中もどこか重たい静けさが漂っていて、紬の心も、空の色に引きずられるように晴れなかった。
朝食を済ませ、洗面所で身支度を整えて戻ってきた紬に、央がそっと声をかけた。
「紬ちゃん、少し出かけない?」
思わず瞬きをする。
「え、今から…?」
「うん。大切な用事だから付き合ってほしいんだ」
その言い方に、胸の奥がきゅっと痛んだ。今日は"あの子"の命日。このあと服を着替えたら、一人でお墓参りに行くつもりでいた。
けれど“大切な用事”という言葉が落ちた瞬間、月城グループ関連の何かだろうかと頭が切り替わる。央がそう言うのなら、きっと彼にとって必要なことなのだろう。
寂しさの影が心の端に残る。それでも、いつも自分を大事にしてくれる人の頼みを断ろうとは思えなかった。
(あの子がいなくなって、もう五年……私もいい加減、気持ちを切り替えないと……)
──そう、自分に言い聞かせる。
「……うん、わかった」
笑顔を作って、そう答える。胸の奥の小さな痛みは、そのままそっと飲み込んだ。