Dearest My Lady
紬はウォークインクローゼットへ向かい、ハンガーに並ぶ服を前にしばし立ち尽くした。
大切な用事とはいえ、当日に突然誘われたのだからきっとフォーマルすぎる場ではないのだろう。けれど、月城の婚約者として同行するのだとしたら、あまりにも軽装というわけにもいかない。
そのあたりの加減がつかめず、紬は迷いながら一着のワンピースを手に取り、央のほうを振り返った。
「えっと……服って、どんな感じがいいかな?」
央はソファの背に軽く肘を預けたまま、柔らかい声で返す。
「ん?何でもいいよ」
「何でも、って……」
思わず困ったように言い返すと、央は少しだけ考えるように視線を上げた。
「強いて言うなら、落ち着いた色合いがいいかな」
その言葉だけでは理由も場面も読み取れない。紬は一瞬首をかしげながらも、控えめな色合いのワンピースを選び取った。
「……これでいいかな?」
央はやわらかく微笑み、短く頷いた。
その反応を確認して、黙って身支度を進めた。鏡の前で髪を整え、淡い色のカーディガンを羽織る。
バッグに必需品を入れて支度を終えて玄関へ向かうと、ももが大きな体を揺らして寄ってきた。靴を履こうとする紬の横で、央がリードを手にしているのが目に入る。
「え?ももちゃんも一緒?」
思わず問いかけると、央は自然な表情で頷いた。
「うん。今日は連れていきたいんだ」