Dearest My Lady

膝がふっと折れるように落ち、紬は小さくしゃがみ込む。震える指先で墓標に触れた石は、曇り空の下でしんと冷たい。

「どうして……」

言葉が溢れた瞬間、しまい込んでいた痛みと愛しさがいっぺんに押し寄せる。ぽとり、と一粒の涙が落ちた。

「今日は、命日だから」

いちごの墓石に花を添える央の声は、とても穏やかだった。

紬はゆっくり顔を上げる。央は思い出を慈しむように、柔らかく微笑んでいた。

「いちごちゃんも紬ちゃんの家族でしょ。だから、ちゃんと挨拶しておきたくて」

ももが足元へ寄り添い、鼻先をそっと押し当ててくる。央は墓標へ目を向けたまま、静かに続ける。

「何年もかかっちゃったけど……やっと結婚できるようになったから。紬ちゃんのことは俺が幸せにするから、安心して見ててねって言いたかったんだ」

紬の胸がぎゅっと締まる。いちごが聞いたら、きっとちぎれるほど尻尾を振って喜ぶだろう。

曇り空の裂け目から淡い光が差し込み、墓標に一瞬きらりと映った。それはまるで虹の橋の向こうから、いちごがそっと顔を覗かせたようだった。

涙を拭っても、次から次へと溢れてきてしまう。

それに気づいたももが、くぅん……と小さく声を漏らしながら顔を寄せた。紬の膝にそっと前足をかけ、覗き込むように見つめてくる。そのいじらしさに、紬は思わず笑みをこぼした。

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