Dearest My Lady
瑠璃とは彼の母親の名前だ。幼い頃からの付き合いなので、親しみを込めて呼ばせてもらっている。
何気ない冗談のつもりで言ったのに、央は少し目を細め、恥ずかしそうに微笑んだ。
「だからか。昔から母さんの必殺技が『紬ちゃんに言いつけるよ』なのは」
その言葉に、紬は思わずクスッと笑った。懐かしさと、少しの照れが胸の奥でやわらかく混ざり合う。
「じゃあ、ももちゃん。ちょっと診させてね」
紬は軽くカルテを確認しながら、聴診器を手に取った。
「前回は少し食欲が落ちてたけど、今はどう?」
「うん。最近はよく食べてるし、散歩も元気。冬毛が増えてきて、ちょっとふわふわすぎるけどね」
央の言葉に合わせるように、ももが「わふっ」と短く鳴く。その素直な反応に、紬の口元が自然とゆるんだ。
「ほんとだ。毛艶もいいし、皮膚の状態も問題なさそう」
指先で被毛を分け、丁寧に地肌を確認していく。ももは紬の手に身を委ね、安心したように体を預けている。
「心音も呼吸も安定してるし、体温も平熱。うん、問題なしだね」
聴診器を外しながら「お疲れさま」とももの体を撫でる。その合図を理解するように、ももは尻尾を思い切り振った。
「今日も健康優良児だね。これなら来月のワクチンも予定通りで大丈夫そう」
「よかった。天城先生に“健康優良児”って褒められると、なんか誇らしいな」