Dearest My Lady
その日のうちに、紬は院長へ静かに頭を下げた。
「……お休みを、いただきたいんです」
院長は何も言わずに、静かに紬を見つめていた。理由を問われる前に、紬は言葉を続けた。
「私のせいで、ご迷惑をおかけしてばかりで申し訳なくて……スタッフのみなさんにも、患者さんにも……」
──限界なんです。その言葉だけは、喉につかえて出てこなかった。
院長はしばし沈黙し、そしてゆっくりと言った。
「あんな記事も噂も、うちの病院の誰一人信じていないよ。私も、迷惑なんて思わない」
「でも……」
「だけど、天城先生の心の方が心配だ。……休みなさい。いつでも戻っておいで」
その言葉に、張りつめていた何かがふっとほどける。
「……ありがとうございます」
深々と頭を下げ、紬はドアへ向かえ。しかしノブに手をかけたその瞬間——
「天城先生」
呼び止められて振り返ると、院長は机越しに静かに言葉を添えた。
「……ちゃんと、彼に相談するんだよ」
心の奥を見透かされたようで、紬は小さく息を呑む。
「……はい」
ドアを閉めて廊下に出ると、静けさが胸に刺さった。
(本当に……ごめんなさい)
誰に対しての謝罪なのか自分でもわからないまま、重い思いだけが、紬の足をゆっくりと沈ませた。