Dearest My Lady
リビングに移動し、テーブルの上にパンを並べると、焼きたての甘い香りがふわりと広がった。
央が淹れたコーヒーの湯気がゆっくり立ちのぼり、ふたりの間に柔らかい空気を作る。
「公園の並木、もう葉っぱがだいぶ濃くなってきてたよ。朝日が透けててきれいでさ。もも、ずっと匂い嗅いでて全然進まなかった」
「そうなんだ……もう夏が近いね。これから梅雨に入るし、暑くなると散歩しづらくなるから、今のうちにたくさん歩かせてあげたいね」
いつもの調子で言葉を返しながらメロンパンを口に運ぶ。好きな味のはずなのに、今朝は少しだけ甘さが遠く感じられた。
「そういえば、新しい家の話。建築士さんから連絡きたんだ」
「えっ……もう?」
「間取り案、第一稿ができてるって。紬ちゃんの希望がちゃんと反映されてるか、一度一緒に見に行きたいんだ」
当たり前のように未来を一緒に描くその言い方に、胸の奥がきゅうっと熱くなる。
「うん……楽しみだね」
そう返した瞬間、央の手がバケットサンドの上でふっと止まった。ゆっくり顔を上げると、まっすぐな視線が紬に向けられる。