Dearest My Lady
朝のぎこちない会話を残したまま、時間だけが静かに過ぎていく。
──『俺って、そんなに頼りない……?』
央が零した弱い声。今にも泣きだしそうに眉を寄せた表情が脳裏に焼きついて、思い返すたびに、胸の奥がじわりと軋んだ。
「……あんな顔、させるつもりじゃなかったのに」
ソファに沈み込んだまま、ぼんやりと天井を見上げて呟く。声に反応して膝の上にもたれていたももの耳がぴくりと動き、それに合わせるように尻尾が軽く揺れた。
普段は仕事で家を空けている紬が今日はそばにいることが嬉しいのだろう。ももは朝から離れようとせず、今も体重を預けるようにぴったりと寄り添っている。
「……ももちゃんが側にいてくれて、助かったなあ……」
思わず漏れた声は、自分でも驚くほど柔らかかった。
応えるように、ももが小さく「わふっ」と鳴く。その健気さが胸にあたたかさを落とす一方で、別の痛みがゆっくりと広がっていく。
(休職のこと……なっちゃんに、どう言おう)
不安を伝えなかったせいで、央はあんな顔をした。そうだとわかっているのに、央のことを思えば思うほど言葉が喉に引っかかって出てこない。
そんなふうに思考の底に沈んでいたとき、ももがふいに顔を上げた。身体を起こし、耳をぴんと立てて玄関のほうを見つめる。