Dearest My Lady

その言葉は、音もなく胸の奥深くに沈みこみ、形を失っていた自分をそっと拾い上げた。

(あ……)

央が好きになってくれたのは──世間が勝手に貼り付けた“悪女”なんかじゃない。

ただの“天城紬”という、ありのままの自分だった。

(そうだった……なっちゃんは、ずっと……)

周囲の評価や貼り付けられたレッテルに怯えるうちに、自分に向けられていたいちばん大切な想いを、いつの間にか見失っていた。

今さらのように胸が詰まり、その奥で、もうひとつの答えが静かに形を結ぶ。

目の前にいるのは、「月城家の跡取り」なんかじゃない。世間が描く、完璧で揺るがない王子様としての「月城央」でもない。

紬が恋をしたのは、幼いころは泣き虫で、紬の後ろを追いかけながら、いつも笑って名前を呼んでくれていた──

紬だけの“なっちゃん”だった。

涙が頬を伝ったまま、紬はそっと視線を落とす。胸の奥に溜め込んでいたものが、まだ言葉にならないまま揺れていた。

他人からの好意は、いつも怖かった。

一方的で、踏み込まれて、断れば責められるか、失望されるか。「好き」という自分勝手な言葉が向けられるたび、体の奥が強張って、息が浅くなる。

──逃げたい。触れられたくない。近づかないで。

そんな拒絶が、条件反射のように先に立つのに。

(なのに……)

央の前では、それが起きない。そばにいても、触れられても、視線を向けられても、心が逃げ出さない。

それどころか──

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