Dearest My Lady
「……なっちゃん」
声は小さく、掠れていた。けれどその名を呼んだ瞬間、胸の奥で何かがそっと定まった。
紬はゆっくりと顔を上げ、濡れたままの瞳で央を見る。
「私もね……他の人だと、だめなの」
言葉を選びながら、ひとつずつ確かめるように続ける。
「好意を向けられるのも、近づかれるのすら……すごく嫌で、怖くて。身体が先に拒否しちゃうの」
そこで、一度だけ深く息を吸った。
「でも……なっちゃんだけは、そばにいてほしいって思う。これからもずっと……私のこと、好きでいてほしいって」
握られていた手を、紬はそっと力を込めて握り返した。瞬きをひとつすると、こぼれた涙がその手の甲にぽとりと落ちる。
「……私も、なっちゃんのことが、好き」
その言葉が落ちた瞬間、央の指先がかすかに震えた。
けれどすぐに、視界がふっと近づいた。
央は何も言わないまま、紬を胸に引き寄せた。その手はぎこちなく震えていて、大切なものを壊さないように抱きしめる、そんな抱擁だった。
「……っ」
肩に額を押しつけられ、央の息がすぐそばで乱れるのが聞こえる。抱き返す腕がわずかに強まったかと思うと、低く震えた声が耳元に落ちてきた。
「俺……自分が、こんなに欲張りだなんて、思わなかった」
絞り出すようなその声は、どこか泣き出しそうに聞こえた。