Dearest My Lady
「紬ちゃんの気持ちが、俺と同じじゃなくてもいいって……そばにいてくれるだけで十分だって……思ってたんだ」
言葉の余韻が落ち着くまでのあいだ、短い沈黙が落ちる。央が深く息を吸う音が、紬の肩越しにかすかに伝わった。
「なのに……好きって言ってくれて……同じ気持ちなんだって知ったら……」
紬の背に回された手が、そっと撫でるように動く。
「……どうしていいかわからないくらい、うれしくて……」
声が詰まり、肩がわずかに震えた。
「もっと……紬ちゃんが欲しいって、思っちゃうんだ」
あまりにも正直な告白に、胸がぎゅうっと鳴る。
央はゆっくりと腕をほどき、紬の顔を覗き込んだ。目元は赤く、笑おうとしてうまく形になっていない表情だった。
「……ごめん。嫌だったら、言って」
その一言が、胸の奥のこわばりをすっと解かしていく。
──気づいたときには、もう距離がなくなっていた。
そっと近づいてきた唇が、ぎこちなく、一瞬だけ触れ合う。それが初めてのキスだと理解した途端、全身が一気に熱を帯びた。
唇が離れると、央はおそるおそる紬を見つめる。
「……嫌じゃ、なかった?」
不安げに揺れる表情が、子どもの頃と同じで。泣き虫だった“なっちゃん”の面影がそのまま残っているようで、胸の奥がぎゅっと甘くなる。
気づけば、紬は央を抱きしめていた。
「嫌じゃない。……嬉しかった」
言葉に重なるように、央の腕がすぐ回される。抱き寄せる力は優しいのに、迷いがなくて真っ直ぐだった。
「……だいすきだよ、なっちゃん」