Dearest My Lady
epi.6
翌朝、紬が目を覚ます頃には、状況はすでに大きく動いていた。
昨夜まであれほど溢れていた見出しやコメントは、まるで幻だったかのように姿を消している。スマートフォンを手に取り何度か画面をスクロールしてみても、目に入るのは別の話題ばかりだった。
ネットニュースの上部には、淡々とした文字が並んでいる。
──《月城コーポレーション、虚偽報道に対する公式声明を発表》
月城グループからの公式発表がなされ、SNSのトレンドにもその名前が上がっていた。
『弊グループ関係者に対する虚偽の誹謗中傷が確認されました。捏造記事であることを証明する証拠を提示し、当該記者とはすでに協議済みです。誠実に医療と向き合う獣医に対する不当な攻撃を、私たちは看過いたしません。今後、事実に反する掲載には法的措置を講じます』
短い文面にも、冷静で揺るぎない強さがにじんでいた。あれほど簡単に広がった言葉たちが、同じくらい簡単に消えていた。
(……すごい。こんなにあっさり終わっちゃった……)
思わず息を含んだ声が漏れた瞬間、スマートフォンが震える。画面に表示された名前に、紬は一瞬だけためらってから通話ボタンを押した。
「……もしもし」
『紬ちゃん!』
受話口から聞こえてきたのは、瑠璃の声だった。